人にも環境にもやさしい、
暮らしに寄り添う草木染

マイトデザインワークス 小室真以人さんに
お話をお聞きしました。

生活があっての草木染

顔料と染料の違いって何ですか?

染料は水溶性ですが、石や土・泥など水に溶けない色素を顔料と呼んでいます。日光が強い南方地域(アフリカや東南アジア)で発展したものなので日差しに強い。色褪せしにくいのが特長です。日本だと沖縄の琉球紅型(りゅうきゅうびんがた)が有名ですね。草木染と違い、生地に細かく砕いた石(原料)を塗り込めていくので、生地が重くガサガサとした質感になります。

ちなみに、色と衣服の関係において、日本は独特の進化を遂げました。欧州は裁断した布で作る「デザイン」を発達させましたが、形に変化のない着物は色や柄を進化させました。四季の気候に恵まれ、シルクロードから様々な染料を持ち込んだ古来、日本人は世界でも最多の色を持っていたと言われます。

昔の人はどのような色を着ていたんでしょう?

藍染や柿渋染め、桑染めなどは庶民の色でした。身近なもので染まる茶・青・黄土色・緑(カーキなど)が主ですね。反対に赤や紫は高級でした。特に紫は、採集が難しい「紫根(しこん)」(紫草の根)や、金より貴重で正倉院に所蔵されもした「紫鉱(しこう)」を使うので高位の人が身につけました。紫根には殺菌効果があったので、病気の際には「魔除け」として頭に巻いて使われたようです。古代ローマにもシリアツブリ貝のパープル腺からわずかしか取れない「貝紫」を使った「帝王紫」があり、ローマ皇帝だけに許されました。メキシコではサボテンにつく小さな貝殻虫(コチニール)で紫を染めました。大量に取らなきゃいけないからやはり高価。昔から、世界中で紫は高貴な人の色だったんですね。

染料、紫鉱(しこう)

赤色は?

赤色は茜で染めます。漢方として使われることもある草木染ですが、茜には血行促進の効果があり、茜の煎じ汁を飲むと身体が温まると言われました。なので、元気が出る色でもあります。また、殺菌効果も。昔は何日も入浴しないので衛生上、茜染のフンドシ(赤フン)などを着て病気予防をしたようです。

色にも効能があるんですね

色の違いは感情に影響するとの研究もあるようです。でも昔は色の原料による効能の違いも大きかったでしょうね。ガラガラ蛇除けの意味がある藍染とか。藍染はバクテリアを使って発酵させた藍を染料に使いますが、その発酵の匂いを蛇は嫌うようですね。

現代人の草木染の楽しみ方は?

色の効能の話もしましたが、まずは染めて出てきた色を楽しむのが一番だと思います。自然のもので染めるので環境にも優しいし扱いやすい。また、思いがけない色が現れたり、違う染料を重ねて色の変化を楽しむこともできます。例えば、青っぽい緑は、藍染で青に染めた後にカリヤスという植物で色を重ねます。植物同士の強弱も面白いものです。カリヤスは藍の上から色を重ねて染められますが、藍に負ける山桃を藍の上から重ねても色が定着しません。

他にも、染料を生地に定着させる媒染の種類によっても色が変わります。そうですね・・・。黄色に染まる山桃は、アルミニウムで媒染すると鮮やかな黄色に染まります。アルミニウム媒染の後、チタンに入れるとオレンジに近い色に。アルミニウム媒染の後に鉄媒染で、濃いグリーンが作れ、さらにカルシウムを重ねることでカーキに近い色が染められます。組み合わせの妙ですね。

色の重ね方だけでなく、植物の生い立ちでも色が変わります。同じ山桃でも、育った場所によって色が変わる。そういう一期一会の色の出会いを楽しんでほしいです。草木染だと庭に生えてる植物や捨てるだけの野菜くず等を使いながら、キッチンで楽しめますしね。

染料の山桃と媒染を変えて染めた布

自宅で草木染をする際の注意点は?

化学繊維は染まらないので、シルクや麻のような天然繊維を使ってください。また、火を使う際は火から離れないようにして下さい。染液の分量は、薄くも濃くもご自由に。染める際には、染液を煮出した鍋に生地を直に入れるのではなく、一旦火を止め染液をバケツなどに移してからゆっくりと染める方が失敗しにくい。染液の温度が高いと色の定着も速いのでムラになりやすいんです。濃く染めたい場合でも、染液に何回も浸けて色を少しずつ重ねるように染めた方がムラなく綺麗に仕上がります。逆に薄く染める時は、低い温度(40℃から水くらいの温度)で染めるといいでしょう。

染めるものは、靴下やハンカチのような小さいものから始めるのがオススメです。慣れてくると、ヴィンテージジーンズなどを藍染や柿渋で染めたり、古いネルシャツなんかを柄物の上から染めるのも、微妙な色合いを楽しめ素敵なものができますよ。制約はありませんから、自由にご家庭で楽しんでもらえるといいなと思います。

最後に

表情や話しぶりから「とにかくものづくりが好き」がこぼれ出る小室さん。最後に夢を聞いてみると、ありすぎて…と迷いつつ一つ教えてくれました。それは「ものづくりのファクトリーを作る」こと。「染物は、染師の僕だけじゃなく、塗りや織る人、パターン職人など、様々な職人の手が必要です。でも今、職人さんは後継がなく技術が廃れ、いなくなってきています。そこで、皆が助け合い一緒に時間を過ごして制作するファクトリーを作りたい。田舎だと生活費がかからないので、ゆっくり職人が育つ環境がつくれます。現代の、すぐに役立たないと稼げないという風潮に一矢報いたい」とのこと。日本の奥深い伝統を今に残し刷新する、その将来にますます期待です。

エコカフェ企画による、暮らしの達人インタビュー。人と暮らしの間にある様々なモノ・コト。多種多様なジャンルで活躍されている方に、環境のこと、暮らしのこと、生活を豊かにする秘訣、などなど、様々な角度からお話をお聞きするコンテンツです。

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