人にも環境にもやさしい、
暮らしに寄り添う草木染

マイトデザインワークス 小室真以人さんに
お話をお聞きしました。

殺菌効果のある「紫色」に、元気が出る「赤色」、
ガラガラ蛇が避けるのは「藍色」?

日本古来の染め技術「草木染」は、身近にある自然の草木を使います。
この草木染めの出す色は、生活の知恵の一つとして
人々に親しまれてきました。

そんな昔ながらの技法と染料を、今に復活させている若手の染師、
それが、マイトデザインワークスの小室さんです。
環境との関わり、そして色にまつわる不思議を、小室さんに伺いました。

  • Maito Design Works

    化学染料を一切使わずに草木染だけで色を染め上げたニットやストール、バッグなどを提案。100%天然染料の草木染めが体験できるワークショップを定期的に開催しています。

人に使ってもらえるモノを
作りたい

なぜ草木染なんでしょう?

もともと父方の一族が、京都の丹後で代々、機屋(はたや)をやってたんです。丹後のちりめんを織ってたんですよね。本家は絹商家もやって明治時代には随分、羽ぶりも良かったらしくて。曽祖父は政治家になった後に実業界に入って鉄道敷設や銀行設立をしたり、幅広く活動したようです。今は、絹の世界から化繊(レーヨン)の道に進んで、その関係の仕事をする親族が多いですね。

繊維を中心に、新しいことをしていくお家なんですね

そうかもしれません。でも、そんな中で、僕の父はカメラマンを生業にしていました。
しかし、僕が幼少の頃、父はカメラの仕事で訪れた彦根城(博物館)で、井伊直弼の膨大な能衣装コレクションを見て感動します。200年を経た衣装に今なお残る、当時の本物の色に強く惹かれたようです。そこで、自分の原点(染物の世界)に戻るぞ、どうせ戻るなら源流の「草木染」に挑戦しようと、小学3年生の頃に、住んでいた東京を離れて、一家で福岡県秋月に引っ越しました。

じゃあ、東京の後は福岡で育ったんですね

小学3年から高校卒業まで秋月で過ごしました。父が一から工房を立ち上げるのを横で見ながら、染料の植物採集といった遊びの延長のような手伝いをして育ったので、中学卒業時には「ものづくりがしたい」と思うようになっていて、デザインを勉強できる高校に通った後 、東京藝術大学に進学。「ものづくり」の道をまっしぐらです。

大学では何を?

大学では工芸科にいました。伝統的な技術を教えてくれる最高峰みたいなところで、いろんな素材を触らせてもらいました。いろんなものを見て、造形をやったり展示会をやったりいろんなことをした上で、やっぱり繊維をベースに草木染するのが面白いなと。それで、大学を卒業してからは、実家に戻ってしばらく家業を手伝いました。いや、手伝いというか修行のために入ったという方がいいかな。実は、大学で教えてもらう染め方よりも父が秋月でやってる染めの方が、より昔の手法に近くて面白かったんですよね。

そこから、蔵前(東京)に工房を持とうと思ったのはなぜでしょう?

東京の水は、決して染物には向かないんですが、古来の染めをもっとたくさんの人に見てもらいたい、と思ったのがきっかけです。それに、草木染の自然の色って都会の人の方が欲してるんじゃないかとも思いました。田舎では、空気が澄んで空がきれいとか、毎日変わる秋の山の色とか、細かな色の変化が身近にあるけど、東京ではあまり見えない。だから、田舎の色を(草木染で)見てもらって、そこから田舎に興味を持ってきて訪れてもらえるといいなぁとも思ってました。

マイト 蔵前本店

そんな時、たまたま秋葉原でお店を出さないかと声がかかって。お店をつくったんですけど、お店なので売るだけなんです。やっぱり手を動かして作れる場所が欲しいなと思ってたら、蔵前の友人が、来ればいいじゃんって言ってくれたんです。蔵前にはものづくりをしている、作ることに真剣な人が集まっています。僕の工房ができた頃にNui.(蔵前のゲストハウス。DIY・クラフト的な要素が満載で、海外からの旅行客で人気。一階のバーは地元の人でも賑わう人気スポット)や、koncent(国内のセンスある雑貨を集めたデザイン雑貨専門店)ができたタイミングで、人が人を呼んで、今、本当に面白い人たちがいる場所なんです。

秋月という土地について
  • 草木染をはじめるため、小室さん一家が越した秋月は、「草木染にバチッと合った町」でした。福岡市内から東へ30キロ。鎌倉時代からこの地を治めた秋月氏の城下町で「筑前の小京都」とも呼ばれ、豊かな自然に囲まれた盆地に位置します。この町の特長は、福岡の水源にもなるほど豊富な水量とアルカリ性の水質。よそでは黒っぽい川底が、秋月ではアルカリ質の漂白作用で白くなるほど。この水質で草木染が綺麗に仕上がるといいます。染めに欠かせない水の量と質、どちらも兼ね備えた秋月は、まさに草木染に適した町なのです。
  • 地図上の秋月

エコカフェ企画による、暮らしの達人インタビュー。人と暮らしの間にある様々なモノ・コト。多種多様なジャンルで活躍されている方に、環境のこと、暮らしのこと、生活を豊かにする秘訣、などなど、様々な角度からお話をお聞きするコンテンツです。

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