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Designer’s
Interview

周囲を笑顔にする
“ギャラリーのようなトイレ”を目指して

約1年半をかけて、完成に至った「GALLERY TOTO」。“ギャラリーのようなトイレ”というコンセプト、3方をガラスで囲った空間構成、国内初の採用となるLEDモニター(ルミナス テキスタイル)の設置など、初めてづくしのプロジェクトでした。数多くの課題をひとつひとつ解決しながら完成に至るまでの想いやウラ話を、設計を担当した建築家とプロジェクトを統括したTOTOのリーダーに伺いました。

  • アストリッド・クライン 氏

    クライン ダイサム アーキテクツ 建築家
    アストリッド・クライン 氏

  • マーク・ダイサム 氏

    クライン ダイサム アーキテクツ 建築家
    マーク・ダイサム 氏

  • 橋田 光明 氏

    TOTO メディア推進部 企画主幹(当時)
    橋田 光明 氏

クライン・ダイサム・アーキテクツは、どんなきっかけでGALLERY TOTOの設計を担当することになったのでしょうか?

橋田氏:
2009年にクライン ダイサム アーキテクツさんが、TOTOの運営する「TOTOギャラリー・間(ま)」で展覧会を開催しました。TOTOギャラリー・間が展覧会を依頼するのは、一定の評価や実績のある建築家の方々です。実は、弊社では、何らかのイベントがあるたびに、ご協力いただきたいという話が上がっていました。
GALLERY TOTOが諸外国の方々が利用すること、その方々にTOTOの技術力やデザイン力をユーモアを持って伝えたいといった条件から、もうクライン ダイサム アーキテクツさんにお願いするしかいないだろうと依頼を決めました。TOTOギャラリー・間を運営している文化推進部からもお墨付きをもらって、一緒にここにお願いに来たんですよね。
緊張感みなぎる初期の打ち合わせ
場所はクライン ダイサム アーキテクツの事務所。

(打ち合わせの写真を眺めながら)

ダイサム氏:
懐かしいですね(笑)。
橋田氏:
最初にお会いしてから、もう1年半ですね。オファーしたのは、2013年の11月ですから。

TOTOからオファーを受けて、どんなイマジネーションが浮かびましたか?

ダイサム氏:
GALLERY TOTOが成田国際空港の待合室のトイレ空間だと聞いて、大変興味をそそられました。そのトイレ空間の前の通路には、何万人ものお客様が通る。そういった公共スペースのトイレはどうあるべきなんだろう、そうだ、思いきりツイストさせようと思いました。ちょっとユーモラスで、見ていて思わず笑みがこぼれるような場所にしたい、と。
クライン氏:
基本的に、トイレのイメージはそれほど良くないでしょう? 面白いとか楽しいという目的で行く場所ではありません。また、とても閉鎖的ですよね。でも、GALLERY TOTOは、トイレ空間でありながらショールームの役割を担います。日本から出発する外国人が最後のいちばんいい思い出をつくることも、このトイレ空間の目的です。面白い経験のほうがいい思い出につながるのではないかと考えて、私たちは何よりもトイレじゃないトイレ、”ギャラリーのようなトイレ”を目指しました。
ダイサム氏:
ひとつずつ、全く異なるトイレのブースを組み合わせてみようと。
クライン氏:
本当にギャラリーのようなイメージ、ギャラリーは異なるものが、台にひとつずつ展示されている。トイレ空間にある各ブースのデザインは一般的に統一されていますが、ここでは異なる魅力を持つデザインにしたかった。
ダイサム氏:
そして、INDIVIDUALもキーワードですね。
クライン氏:
そう、完全にひとりになれること。トイレを利用するお客様が、品位や威厳をきちんと保てるような…。
ダイサム氏:
また、ギャラリーという着想から、ガラスの箱の中にいろいろなものが置いてあるようなイメージは早いうちから固まっていました。
クライン氏:
ギャラリーは隠れるところではありません。それどころか、見せる場所ですね。ですから、“ギャラリーのようなトイレ”を目指して、普通のトイレの印象から離れるために、閉鎖的ではなくて思い切りオープンにしようと。そんな考えから、トイレ空間を透明なガラスで囲みました。外部のどこからでも空間を見ることができるけれども、トイレのブースに誰かが入るときに中が見えないような、ブースの位置、ドアの配置を検討して。
橋田氏:
プライバシーが守られるのか不安なようで、このアイディアに抵抗のある関係者もいらっしゃいましたね。初めのうちは。
クライン氏:
成田国際空港の担当者を含めた打ち合わせのとき、橋田さんが、“極端”なトイレがいいとおっしゃって驚きました。たとえば、ブースがひとつだけあるようなデザインでも構いませんと(笑)。
ダイサム氏:
僕も驚きました(笑)。打ち合わせのシーンが脳裏に残っています。
橋田氏:
ええ、言っていました(笑)。それくらい、このプロジェクトは、今までの概念を取っ払って構わない、その覚悟がメーカーにないと、建築家に依頼できないだろうと…その思いを伝えたかった。
成田国際空港の役員室でプレゼン
写真左)模型を見せつつ成田国際空港の役員に説明するクライン氏。
写真右)GALLERY TOTOのつくられる連絡通路の建築予定地を視察。

そのときに提案されたプランは、すでに完成の状態に近かったのですか?

橋田氏:
そうです、ほぼそのまま。2014年2月の中旬に完成した模型と、変わりありません。
クライン氏:
当初は3つの案がありましたが、そこからすぐにガラスの箱の中にユニークな形のブースが10室あるこの案に絞 り込みました。
橋田氏:
関係者はみんな、もうこれで行こうよっていう雰囲気でしたね。最初は、ブースがまるっきり「TOTO」の形でした。あれは良かった! 設備機器の配置や待合スペースの豊かさなどを配慮して、徐々に形を変えて行きましたね。
クライン氏:
調整していって、最終的に「TOTO」とは判別しにくい形に落ち着きましたが(苦笑)。
ダイサム氏:
「TOTO」の形だと、ブースが4つしかできないが大丈夫か、という指摘もありましたね。
橋田氏:
実際には利用者が膨大な国際空港ですからね。やっぱりひとつのブースは無かったですよね。

成田国際空港のご担当者からは、どんなご意見が?

橋田氏:
国際空港のトイレをつくるという立場から、男子小便器の数やブースそのものが足りないのでは、と。それから、やはり、外側の壁をガラスにしてトイレの通路が全部見えちゃって本当にいいのかという、この2つですね。ブースの中のプライベート空間は見えないようにした、と説明はしたのですが。
ダイサム氏:
僕が覚えているのは、「世界一きれいなトイレ」の話かな。
クライン氏:
そうね。私たちは仕事やプライベートで世界中のさまざまな空港に立ち寄り、もちろんトイレも見ている。残念ながら、その中で成田国際空港のトイレ空間のデザインは、まだまだ印象に残るものとは言えませんでした。そこで、成田国際空港の担当者の方々に現在、ターミナルにあるトイレの魅力は何なのか聞いてみたんです。答えは「世界一のきれいなトイレとして知られている」、でした。でも残念ながら、きれいなだけでは世界の人たちにはなかなか通じないと思われました。
つい最近ニューヨークの講演会で、学生たちに成田国際空港のトイレ空間を設計している、と話したところ失笑されました。「へ~、トイレをやってるんですか?」って。世界がそういう風潮である中で、トイレはきれいなだけでは魅力になりにくいんです。私たちは長く日本に住んでいるから、清潔なトイレ空間の素晴らしさや価値がわかるのですが・・・。だから、多くの外国人が利用するトイレ空間は、トイレらしくない面白さがあったほうがいい。

空間デザインはもちろん、外壁にもダンスの映像などが流れていてGALLERY TOTO全体が楽しさに満ちています。

ダイサム氏:
ここを利用する人たちはもちろん、周りにいる人たちにも楽しんでもらいたい、という気持ちがあって。
クライン氏:
周りは待合室。そこで出発を待っている数百人の人たちは、きっと退屈するでしょう。テレビ番組が流れているけれど、日本語であればほとんどの外国人はわからない。
ダイサム氏:
そうだね、飽きてしまうしね。
クライン氏:
だから、特にGALLERY TOTOの外壁の映像は、みんなで楽しめるものであればいいなと。人間って実は、ほかのの行動を観察するのが好きでしょう。マン・ウォッチングね。外壁沿いに流れているユニークな映像、「トイレ・ライフ」は、それがヒントです。便器の周りで、人が変な格好で踊ったりする(笑)。
トイレの中で他の人は何をするんだろう、と想像が膨らむストーリーをつくったんですよ。普段見えない場所が見えているのも、興味をそそる表現のひとつ。

映像が映し出されているのは、大型のLEDモニターですね。

ダイサム氏:
フィリップスのLEDモニター、ルミナス テキスタイルです。1年半前、イタリア・ミラノのデザインの祭典、ミラノサローネで初めて見て、一目惚れしてしまった(笑)。これはきっと、面白い使い方ができるぞ、と。
クライン氏:
マーク(ダイサム氏)はミラノから帰って来て、それでいちばん盛り上がっていた。もう使いたくてしょうがない(笑)。チャンスを待っていた。
橋田氏:
ちょうどいいプロジェクトが来た!と(笑)。表面の素材は布製で、背面からLEDによる映像を投影する。だから、映像の輪郭が柔らかくなるんですね。確かに、独特な表現が楽しめる仕掛けです。
ダイサム氏:
そうでしょう?
橋田氏:
ちょうど大型モニターを使いたいという理由もあって、別の超高精細モニターを外壁全面に使う前提で見積りを取ったら、約1億円! 青ざめちゃって(笑)。そこで、使用する面積を絞り、ダイサムさん一押しの、新しい感性に訴える技術を盛り込んだこのルミナス テキスタイルを採用しました。
クライン氏:
予算だけじゃなくて、技術的にも課題がありましたね。
橋田氏:
布製のものを公共建築に収めるのは、非常に難しかったですね。特に、消防法上の問題で。成田国際空港の方々や工事を行ったTOTOエンジニアリングの担当者が、管轄の消防に何回も説明しに行ってくださって対策を練り、実現できました。
クライン氏:
みんな、このアイディアは面白い、このLEDモニターはここにあるべきだよねっていう気持ちになっていましたね。
ダイサム氏:
日本の障子に映像を映し出すようなぼんやりとした感じになる。それがいい。
クライン氏:
影絵のようです。全部はっきり見えるよりも、想像が膨らみますよね。
橋田氏:
トイレのブースの中でみんな何やっているのかわからない、けど、こんなこともしているかもな…。そんな感じです(笑)。
設計図を前に細部の確認作業
2014年4月。内装デザインの細部について詰めていく。

外壁側に流れている映像の作家はブラック・バスの為永泰之さん。
最初から、彼のコミカルな世界観はイメージにあったんですね。

映像の主役、「珍しいキノコ舞踊団」
スタジオにて映像の撮影中。手前に映る横顔は為永氏。
ダイサム氏:
15年前からの知り合いで、彼の世界観はよく知っていました。
クライン氏:
そうですね。
ダイサム氏:
映像で踊っているコンテンポラリー・ダンスのグループ、「珍しいキノコ舞踊団」のメインダンサーも友達。珍しいキノコ舞踊団はアートスペースでパフォーマンスもしています。
橋田氏:
為永さんとクラインさん、ダイサムさんそして、ダンサーの方々の相性が、抜群にいい。
クライン氏:
私たちは、為永さんを信頼している。そして、為永さんは舞踊団を信頼している。そういう信頼の連鎖で、あの映像、「トイレ・ライフ」が完成しました。
橋田氏:
撮影中のスタジオに行ったんですよ。お昼の12時前から夜の10時まで、約10時間かかりましたね。パフォーマンスが面白くて、何枚もシャッターを切りました。
クライン氏:
珍しいキノコ舞踊団は、本当に素晴らしい。とてもウィットに富んでいる。
橋田氏:
映像は今後、季節やイベントに合わせて切り替えていければいいなと考えています。特に、東京オリンピックに向けては、新しいバージョンを加えたい。連続性のあるスポーツものなどを、映像作家の為永さんにお願いしたいと思っている。実は、すでに水泳バージョンなどもあったんだけど、それは次回のお楽しみになりました。
ダイサム氏:
テニスとか、バスケットボールとかそういう感じね。
クライン氏:
トイレで体操する人たちがいるのも、いいかもしれない。
橋田氏:
バック転をしたりね。そんなのやりたいですね。

空間を囲むガラスは1枚がかなりの大きさですね。映像が途中で寸断されない。
外観にシームレスなガラスの箱の印象も生み出しています。

橋田氏:
1枚のサイズは最大で2500×2230mm。厚みは12mmのガラス2枚を貼り合わせた計24mm。実は、同じ現場の建物の開口部に使われているガラスと同じ仕様で、非常に強度が高い。工事中の搬入の際は、たくさんの職人さんが慎重を期して設置しました。
クライン氏:
素敵! 建物の開口部は相当の大きさがあり、あのサイズで設置できるのかなってずっと疑問だったけれど、できるんですね。GALLERY TOTOにも同じ仕様のガラスを使えてよかった。
橋田氏:
ガラスの箱のイメージから、できるだけ大きなサイズのガラスを使いたかった。搬入経路、予算もあるところですが、何よりもクラインさん、ダイサムさんのイメージに合う最大級のガラスを用意できました。

ところで、今回のプロジェクトの制作過程の中で、いちばん印象に残っていることをお聞かせいただけませんか?

ダイサム氏:
私はルミナス テキスタイルの関連ですね。消防法の問題、コストの問題、サイズの問題など何度もダメ出しがあって…(苦笑)。ずっと取り入れたいという思いは揺るぎませんでしたが。
クライン氏:
一時期、マーク(ダイサム氏)は「あれがなければ、私はミーティングに出ない」と(笑)。
ダイサム氏:
これまでの20年間の経験からすると、作品にダメ出しはつきものですね。
クライン氏:
そうですね。私たちは、前例がないことをやりたい。それぞれのプロジェクトならではの、ユニークさを考えていきたい。大きなチャレンジですが、そこまでやらないとPRバリューになるような話題性が生まれないでしょう。ただのきれいな場所なら、日本ではごく普通ですから。また、私たちは次の面白いプロジェクトを受けるために、普通のものをつくっちゃだめだと肝に銘じています。誰でもできるものを、私たちに頼む必要はありませんよね。毎回、予算の兼ね合いや技術的な問題も当然あります。でも、そこを頑張って乗り越えると、もちろん簡単ではありませんが、後の喜びが何倍にもなる。クセになるくらい(笑)
橋田氏:
このハードルを飛び越えないと、やはりヤッタ感がないんですね。
クライン氏:
こうじゃないといけないと分かっているときに、それを簡単にあきらめられない。
橋田氏:
私は多くの建築家の皆さんと仕事をしてきましたが、どなたもこだわりを持って、最後まで貫きますね。著名な先生方には、建築の大きな枠取りが完成していればそれで仕事は終わりという印象を持ちがちだけれど、実は結構細かいところまでこだわっていて、それがいいものに醸成していく。
クライン氏:
それは私たちも同様で、細かいところまで気を配ります。ただ、お客様は、ここにはこういうこだわりがあり、そこにはまた別のこだわりがある、というほどその細かな違いは見分けられない。お客様には空間全体が一度に目に入るから、それらがシームレスにつながっていくものでないと、魅力が伝わらないと思う。
施工工事も中盤。空間が徐々に形に
写真左)2015年2月。ガラス設置、ブースの下地が完了して記念撮影。
写真右)ブース内部に使用するハイドロセラ・ウォールの施工を説明中。
橋田氏:
客観的に見ると、いちばん印象的なのは、マークさんとクラインさんがLEDモニターのテスト点灯を見た瞬間だったんじゃないかな。あのときの嬉しそうな顔!
クライン氏:
クリスマスのようだった!
ダイサム氏:
思ったよりずっときれいだった。ルミナス テキスタイルに映し出される映像は、ファジー。GALLERY TOTOの周りには外光が入るし、照明も明るいから本当に映像が見えるかなとちょっと心配していたんだよ。
クライン氏:
テスト点灯のときは真っ暗だったので問題なかったけれど、昼間は本当に心配だった。でも、昼間も映像がはっきり見えるのがわかって、安心した。
ダイサム氏:
あのとき工事現場の人たちも、みんな見ていたでしょう? あれは嬉しかったな。
クライン氏:
プロジェクトが終わって、大勢の人をスマイルさせるのはいちばん嬉しいこと。
カラフル、ユニークな映像に湧いたテスト映写
写真左)2015年3月。LEDモニターのテスト映写を見守る為永氏、橋田氏、クライン氏、ダイサム氏(左から)。
写真右)外壁沿いのLEDモニターに映写中。色調も人影もイメージ通り。

ブースの前のインジゲーターはどうでしょう。
これも初めての試みですね。

橋田氏:
ブースに入ると光が青色から赤色に変わり、30秒ごとにステップアップして、10分で最大になります。その後、点滅を始める(笑)。
クライン氏:
早く出て行って!って言うようにね(笑)。外に待っている人もいるんだよって分かるように、内側にも同じシステムをつけました。ゆっくりはしていただきたいけども、ブースの中からなかなか出てこない人もいらっしゃいますから。
橋田氏:
我々は、こんなウィットに飛んだ仕掛けを期待していたんです。設計の途中にはここまで必要かという意見もありましたが、やはりあきらめたくなかった。外壁に流れる映像とともに、強くトイレ空間を印象付ける仕掛けになりました。
ブースでの滞在時間を示すインジケーター
入室するとドア横のインジケーターが赤く点灯(左)、時間が経つと伸びていく(右)。

もうひとつ(笑)。リモコンの操作説明が非常にシンプルで驚いたのですが…。

橋田氏:
そうなんです。説明が過度にならないように、また、空間を損なわないように、クラインさんたちにシンプルなデザインを検討いただきました。説明を極力抑えるということは弊社には相当の冒険であり、社内の反対は覚悟の上で依頼しました。
情報を絞り込んだリモコン操作説明
リモコンの操作説明は3種類のみ、下のプレートに3言語の説明。
クライン氏:
公共建築のウォシュレットは説明が多過ぎて逆に分かりにくいし、建築空間を無視してシールを貼る方法も改善したいと思っていました。ですから、シンプルで分かりやすくするために、同サイズのプレートを組み合わせ、リモコンまわりも空間と同様のデザイン性で統一しています。でも、橋田さんたちは、社内的に大変だったんじゃないでしょうか?
橋田氏:
言葉は日本語のほか英語、中国語、韓国語に絞り、説明は「止」「おしり」「流す」の3つだけに。社内からの批判を受けて立とうとしたら、「凄い」「いいじゃん」「これで良いんだよ」という意外な反応。弊社の技術陣の感性も捨てたものではないなと思いました。

お客様には、GALLERY TOTOをどのように楽しんでいただきたい?

クライン氏:
あまり期待せず、ゼロからあの空間を楽しんでほしいですね。普通のトイレと比較し始めると、多分たくさんクレームが出てくるんじゃないかな。どこで並べばいいのかとか、なかなか出てこないなとか、なんでひとつひとつのブースがああいう面倒くさいカタチになっているの? とか(笑)。
橋田氏:
初めて出会ったものに、理由を知りたい人もいらっしゃいますね。
クライン氏:
そうならないように、どちらかといえば、これはギャラリーという認識でいてほしいですね。しかもこのギャラリーには、アートに詳しくないお客様が立ち寄る。それでいいんです。とにかく見てエンジョイしてっていう、それだけ。もちろん、実は、スペシャルな今まで見たことのないトイレ空間なのですが。
ダイサム氏:
見たことのないものですが、タイムレスです。ファッショナブルなインテリアではなく。
クライン氏:
ある意味で、この空間では結構単純なことをやっている。そこでお客様に素直に心地よさを感じてもらって、その経験がTOTOのブランドにつながっていく。便器を買うとき、そういう経験があったら、TOTOを選ぶのじゃないかしら?

これだけ長くお付き合いをしていながら、橋田さんはGALLERY TOTOのオープン当日に初めてわかったことがあったそうですね。

橋田氏:
壁に使われている写真です。富士山や滝、ハート形の島ですとかバリエーションが広くて、どういう観点で選ばれているのかすっと不思議だったんです。我々はクラインさん、ダイサムさんのセンスを信頼していて、ざっくりと「水に関するもの」と希望をお伝えしただけでしたから。オープン当日、他のインタビューであっさり「ああ、あの写真は私の行きたいところです」とクラインさんがおっしゃっていて、ああそうなのかって。
クライン氏:
ちょっと説明を補足しますね(笑)。選んだのはもちろん、水に関係する海や湖、川、滝を前提に、それから、成田という場所柄、旅するイメージも含んでいます。トイレのように静かな場所で目に入ったときに、ああここに行きたいなという気持ちになるような、心地いい写真を選んでいます。日本だから富士山もなんとか入れたい、と思っていたら、手前に河口湖が広がる写真が見つかった。
橋田氏:
意外かもしれませんが、我々は聞けなかったんですよ。自由に選定してくださいとお願いしたからには、こちらから野暮な質問をするべきではないと思って(笑)。

最後に、今の気持ちをお話しいただけますか。

橋田氏:
GALLERY TOTOが完成、無事にオープンした今、ほっとしつつもあの楽しい設計の日々、現場との格闘の日々がなくなるのはちょっと寂しい感じです。
クライン氏:
まだ、かっこいいトイレをつくるべき場所はたくさんあると思う。また、新たなプロジェクトに挑戦したいですね。
ダイサム氏:
ぜひやりましょう!(笑)

取材:介川 亜紀、写真:大木 大輔