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フィールドオフィス・アーキテクツ展 Living in Place|出展者について

出展者について
Living in Place
宜蘭(イーラン)の風土に根差した設計集団フィールドオフィス・アーキテクツは、現代の台湾で徐々に成長と拡大を続けている100人近くの「意志同盟」である。真実を探し求める生き方を追求し続けて以来、20年のうちにようやく組織らしいものになってきた。フィールドオフィスには、純粋な意志に突き動かされてこうした生き方を選ぶ者たちが、おのずと集まってきた。「プロ集団として地域に根差し、新しい生活を創造したい」と夢見る若い世代にとって、この生き方は普遍的な選択肢になるかもしれない。本展が体系的でもなければ構成も整っておらず、またあまり明確でもないことを許してほしい。それというのも、フィールドオフィスの仕事は、さまざまな出来事が同時多発的に発生しているうえに、それぞれがまだ進行中で、今後も手を加えられる可能性があるからだ。日差しとともに雰囲気が変わるTOTOギャラリー・間の空間に触発され、本展のテーマとして4つの「気づき」を設定した。これらに従って、私たちがこれまで辿ってきた紆余曲折の体験を、ぜひあなたにも追体験してもらいたい。

気づき1「時間と仲良く」
新たな可能性を求めてアメリカに渡ったものの、結局挫折して台湾へ戻り、宜蘭に住み着いた。やがて宜蘭固有の気候や神話、歴史、反骨精神に接するうちに、私はこの土地の民主的な国民性が失われていないことに徐々に気づいていった。若い世代も専門性という縛りにとらわれなければ、チャンスはそこらじゅうに転がっている。依頼主がいなければ自分で探せばいい。そうした発見の蓄積と、公共空間のプロジェクトが帯状に広がっていくうちに、私たちの存在は人々の記憶に刻まれていった。

気づき2「山、水、土、海と暮らす」
風、水、生態系は、都市を抜け、その先へ流れていく。その流れの中では、自分さえよければいいという発想では、都市はいずれ廃れる。都市と田園は互いに助け合いつつ、双方からヒントを得ることで、より建設的に全体を運営できる。こうした問題に対して私たちが途中で匙を投げたりしないと理解されてからは、各方面の専門家たちが知恵を貸してくれるようになり、どうにか実務をこなせるようになった。

気づき3「基準線としてのキャノピー(天蓋)」
キャノピーの実質的な機能は、意識的につくられた「空白」であり、民主的で階級のない社会を暗示している。ほどよい高さに基準となる線が引かれることで、見慣れた風景もまた美しく見えるだろう。こうした大小のキャノピーを通じて、建築は、文化の違いや政治の変動を超えて、時の経過に耐えられるのだと確信するに至った。

気づき4「ただ自分の身体に意識を向け、いつしか時を忘れる」
本展のクライマックスは「宜蘭県立櫻花陵園」のプロジェクトである。ここでは環境に配慮した土木工学的技術に加え、晴れた空と雨と霧とこだまが交互に登場する映像によって現地の空気を再現する。その映像から、3本の川が三角州で合流し、幾重にも連なる砂丘の層が太平洋に向けて一面に広がる宜蘭の光景を思い浮かべていただきたい。

これら私たちの気づきを通して、誰もが一度は、故郷の美しさを守るために奮闘してほしいと願っている。
黃 聲遠(ホァン・シェン・ユェン)
フィールドオフィス・アーキテクツ(Fieldoffice Architects)
フィールドオフィス・アーキテクツは、黃 聲遠氏によって設立され、台湾の"宜蘭県"を中心に活動を続けている。
黃 聲遠氏は1963年台北市生まれ。台湾東海大学を卒業後に渡米し、イェール大学大学院修士課程を修了後、エリック・オーウェン・モスの事務所に勤務。1994年の台湾帰国と同時に宜蘭へ移住し、フィールドオフィスを開設した。その後20年間に、China Design Exhibition Outstanding Spatial Design Award(2012)やChinese Architecture Media Awards Best Architecture Award(2012)など、国内外で20以上の賞を獲得している。
TOTO出版関連書籍
著者=フィールドオフィス・アーキテクツ+ホァン・シェン・ユェン