TOTO

乾久美子+東京藝術大学 乾久美子研究室 展 小さな風景からの学び

出展者について
小さな風景からの学び
半年以上かけて、学生やスタッフと共に「小さな風景」を撮影することを繰り返してきました。気になる風景があればとにかく撮影し、毎週のように持ち寄り、分類をし続けたのです。「気になる」などというといかにも適当な感じがしますが、人は、そうした言葉にならないぐらいの感情の動きで空間の魅力を判断しているのではないかと考えてみたのです。

最終的に大量の写真が集まりました。「気になる」という撮影者の気持ちがよくわかる風景ばかりです。見るものを誘い込むような魅力にあふれ、あたかも擬人化したくなるような表情の豊かさがあります。しかし撮影されてきた対象物は大きくバラツキがあり、共通する「何か」はそう簡単には見えてきません。最終的に見つかったのは「サービス」という言葉でした。生態学で使われるこの言葉を写真の中の風景の評価に適用すれば、そこから何かが学べるのではないかと考えたのです。

展覧会では、大量の風景写真の展示を通して、風景がかもし出すさまざまなサービスの表情を楽しむような視点と、そこからの考察を提示します。自然からのサービス、人為的なサービス、偶然のサービス、ユーモアのあるサービスなど、私たちは空間の中でさまざまな次元でサービスを享受しつつ、その質を表情として読み取っているのではないかという仮説を通じて、「生きられた/計画された」といった区別を超えた空間や建築の価値のありようを考えていきます。
乾久美子
出展者プロフィール
調査メンバー:東京藝術大学乾久美子研究室
/乾久美子建築設計事務所
(左から) 吉野太基 宮崎侑也 森田夏子 下岡由季
乾久美子 野上晴香 西澤徹夫
森中康彰 谷田一平
乾久美子 INUI KUMIKO
1969年大阪府生まれ。1992年東京藝術大学美術学部建築科卒業。1996年イエール大学大学院建築学部修了。1996〜2000年青木淳建築計画事務所勤務を経て、2000年乾久美子建築設計事務所を設立。2011年東京藝術大学美術学部建築科准教授就任。主な建築作品に、「Dior Ginza」(2004)、「アパートメントI」(2007)、「フラワーショップH」(2009)、「KYOAI COMMONS」(2011)など。現在は東北で小・中学校の計画や、宮崎県延岡市におけるまちづくりが進行中。
TOTO出版関連書籍
編著者=乾久美子+東京藝術大学 乾久美子研究室