デイヴィッド・アジャイ 展 OUTPUT
2010 7.8-2010 9.18
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光と都市
都市にいるという実感を人に抱かせる建築。そういう建築を、私は目指してきた。
私の眼に映る都市は、日々進化している。都市とはそういうものであって、さほど非人間的なシステムでもないだろう。プロジェクトの空間構成を練る際にも、いったん都市に立ち戻ってみたり都市体験の豊かさを思い浮かべたりすると、必ずや重要なヒントが見つかる。といって、構造面での可能性が広がるわけではない。むしろその場所のリアリティに満ちた、空間の物語が紡ぎ出されていくような感覚だろうか。プロジェクトの規模の大小にかかわらず、都市の縮図をつくるという発想はたいへん刺激的だ。
建物の内であれ外であれ、光の果たす役割はとても大きいように思う。建築にもっと光を活用できないかと思案を巡らすたびに、これまでの人生経験が役に立った。アフリカ育ちの私にとって、生まれて初めて目にするイギリスの光は、ただただ驚きであり感動的――まるでほかの惑星に来たような気分――だった。見慣れていた光よりもずっと弱い。あまりに弱いので、光を感じるにはもっと窓を開ける必要があった。 
光に関してやはり貴重な経験をしたのは、留学先の日本でのことだ。留学中に、京都のとある茶室の図面を一式起こしたのも、じつは光を知るためだった。茶室を測量しつつも、そこにどんな素材が使われているかにはあまり意識が向かなかった。茶室といえばよく素材使いの妙が云々されるが、しかし茶室建築の魅力は、光と素材と意匠とが渾然一体となっている点にあるのではないか。
日本を訪れたことをきっかけに、ふと祖国アフリカとその光にまつわる記憶が蘇った。アフリカの光の強さはすさまじく、彼地では建築にしろ空間体験にしろ、光の影響をまともに受ける。しかしその度合いは場所によってまちまちだ。そのことを写真に撮ろうと思い立った私は、アフリカ大陸53首都の行脚を始めた。このアフリカ・プロジェクトが完了したら、その調査結果を設計の仕事にも活かしていきたい。

デイヴィッド・アジャイ

デイヴィッド・アジャイ氏は、今世界でもっとも注目を集める若手建築家のひとりです。タンザニア生まれのアジャイ氏の作品には、祖国アフリカの多様な文化風土や美術をはじめ、現代アートや音楽、留学先の日本で学んだ茶室建築にいたるまで、実に多方面からの影響が反映されています。
アジャイ氏の建築の特徴は、素材と色彩の大胆な組み合わせと光の操作によって、シークエンスごとに移り変わる多様な空間体験を生み出している点にあります。それは、日々変化する生きた都市の状況を建築体験として表現することであり、氏がこれまで経験してきたきたさまざまな光――アフリカ大陸の強烈な直射光、イギリスの淡い日射し、日本建築から学んだ陰影の美など――から導かれた、彼自身の体験にも基づくものと言えるでしょう。
本展覧会「OUTPUT」では、「光と都市」をテーマに、アジャイ氏の建築活動を紹介します。アジャイ・アソシエイツ開設10年目に開かれる本展は、日本でアジャイ氏を紹介する初の展覧会となります。初期の代表作から最新プロジェクトまで氏の主要な作品を網羅し、建築模型、図面、実作の写真が一堂に集められます。デイヴィッド・アジャイ氏の現在の到達点を紹介(OUTPUT)するとともに、今後の方向性も示唆してくれるものとなるでしょう。


デイヴィッド・アジャイ展 OUTPUT

■開催時間
11:00−18:00
金曜日は19:00まで
■休館日
日曜・月曜 ・祝日
夏期休暇:
8月8日(日)〜8月16日(月)
■入場無料





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