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高橋テイ一/第一工房展
TAKAHASHI TEIICHI DAIICHI・KOBO ASSOCIATES
2003 11.22- 2004 02.07
高橋てい一的思考のかたち

レポーター:曽我部昌史
高橋青光一氏は好奇心いっぱいの建築家である。構造マニアであり、ディテールフェチでもあり、何と言っても新しもの好きである。そして、軽妙でウィットに富んだ語り口からもわかるように、根っからのエンターテナーでもある。建築の設計においても、みんなを楽しませることを目指して、好奇心をもとにした独自の工夫を重ねる。しかしながら、変に偏った過剰な表現になることはない。建築総体として総合的にコントロールされたものとなることが目指されているようである。そうした中に、ちょっとした工夫がちりばめられているのである。そうやってつくられた建築を体験することは、工夫の一端が少しずつわかってくるようで、ちょっと楽しい。良い言葉が見つからないけれど、オチャメなのである。
第1展示室 「佐賀県立博物館」(1971年)から「群馬県立館林美術館」(2001年) まで、代表作6作品をパネル展示。
第1展示室
「佐賀県立博物館」(1971年)から「群馬県立館林美術館」(2001年) まで、代表作6作品をパネル展示。
第1展示室パノラマ画像
※画像を御覧頂くためにはQuickTimeが必要です、詳細はこちら
第2展示室 「大阪芸術大学」「東京都立大学」「中部大学」「東洋大学白山キャンパス」
第2展示室
「大阪芸術大学」「東京都立大学」「中部大学」「東洋大学白山キャンパス」
のキャンパス計画を紹介。
高橋氏と藤森氏の対談ビデオも上映中。
第2展示室パノラマ画像
好奇心をもとにしてエンターテナー的な建築家がつくった建物というと、かなり独特の印象をもったものになりそうである。しかし、第一工房の建築群には一貫した作風のようなものがない。押さえるべきところはきちんと押さえるというのも第一工房の建築がもつ特徴の一つでもあるので、そういう意味でもパッと見が似たような印象をもった建築になりそうなのだけれど、ひとつひとつの建築は全然違った印象をもっている。もちろん、担当スタッフに勝手にやらせた結果、ということでもないだろう。それでは、なぜ一貫した作風を感じにくいのか。
今回の展覧会のために高橋青光一氏と藤森照信氏の対談が行われているのだけれど、この対談を読んでいて、その理由がなんとなく判った。一言で言えば、プロセス重視なのである。出来上がる建物としての表現よりも、つくるまでのプロセスを大事にしているのである。対談の中でも「一番うれしいのは、つくっている最中だからね。」「あとは、誰が何と言おうといいんだよ。」のように語っている。建物をつくる過程のなかでいろいろな工夫を重ね、そういうプロセスそのものを楽しむことが高橋青光一氏にとって建築をつくるということなのである。
今回の展覧会では、こうした高橋青光一的思考のかたちが、展示形式に端的に表れている。基本的には、これまでの作品群が写真パネルで並べられているのだけれど、一つだけの例外が先にふれた藤森さんのインタビューである。インタビュー風景が時代ごとに編集され、その映像が壁面にプロジェクションされている。なんだか白昼夢のような、空々しい感じすらする映像なのだけれど、きっとそれは、オーバー気味の光の加減のせいであって、内容のせいではないだろう(正直、ちょっとかっこつけ過ぎなんじゃないか、と思えなくもないが・・・)。内容的には、藤森さんの観察(ツッコミ)に高橋さんの回答(ウィット)が返すという形式なのだから、面白くないわけがない。元のインタビューが、この展覧会に合わせてまとめられた作品集『高橋青光一/第一工房1960-2005』(TOTO出版)に収録されているのだけれど、そちらのほうがリアルで面白い。ちょっと知的でスピード感のあるやりとりが目に浮かぶ。パラパラ見ているだけでは、なんだか堅い印象の作品集のようだし、紙質のせいか実際重い本なのだけれど、内容的には大変カジュアルでたのしい作品集になっている。
デビュー作「内村直也氏の書斎」模型。
デビュー作
「内村直也氏の書斎」模型。
S.F.S21(超免震建築の開発)模型。
S.F.S21
(超免震建築の開発)模型。
デビュー作「内村直也氏の書斎」模型。
『高橋青光一/第一工房 1960-2005』(TOTO出版)

撮影=ナカサ・アンド・パートナーズ(書籍を除く)
パノラマ画像撮影=コムデザイン

作品は、選び抜かれた写真を大きなパネルにして展示している。カット数は多くない。建物の全体を伝えるための必要最小限をきちんと守ろうとしているようである。ある部分に偏った過剰さも無い。まさしく第一工房の建築のように、総合的にコントロールされている。そうしたなかに、ちょっとした(しかし重要な)ディテールが描かれていたり、やじろべえ原理の体験模型が用意されていたりする(ぼくが行ったときには調整中で見ることができなかった。残念)。工夫が体験できるようになっているわけである。なかでも、作品ごとに用意された単文のコメントがいい。作品集に掲載されているコメントは本人の文章ではないような気がするのだけれど、展示パネルのコメントは高橋てい一本人のものに違いない。ウィットに富んでいて楽しい。「それほど重要な話ではないのでは?」と思うようなコメントが、実はとても重要なのである。建築を考えるときに、どういうレンジで考えているのかがよくわかる。


※高橋テイ一氏の「テイ」の字をシステム上「青光」と表記しています。あしからずご了承ください。
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