TOTO
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  • 6. 未来を支えるファインセラミックス- 水まわりで鍛えた技術が生きる新領域事業
  • プロローグ 現代社会に不可欠なファインセラミックス
  • セラミックスは陶磁器やガラスなどの窯業製品全体を表し、ファインセラミックスは「優れた性質や機能を有するセラミックス」という意味をもつ。そして今や鉄をはじめとする金属材料、プラスチックなどの有機材料と並ぶ3大工業材料のひとつとなっている。現在情報通信の世界で進行している、携帯電話やウェアラブル端末を活用した生活のスマート(情報)化は、ファインセラミックスの需要をますます高めている。TOTOがファインセラミックスの本格的調査・研究に着手したのは1976(昭和51)年。日本では、第1次オイルショックによる経済混乱が続き、多くの企業が新たな事業戦略を迫られていた時期である。激動する時代状況の中、当時の社長 黒河は、新製品、新分野への挑戦の重要性を強調し、住設機器以外の分野にも踏み出したのである。
  • ファインセラミックスの概念図
  • 6 未来を支えるファインセラミックス ─水まわりで鍛えた技術が生きる新領域事業
  • ファインセラミックスは、高度情報化社会を支える重要な工業材料。IoTなど通信ネットワークのさらなる拡大が予想される中、世界に高度な素材を提供するTOTOのファインセラミックスは、水まわりで鍛えた技術をベースに、未来の社会を支えていく。
  • 第1章 水まわりではない事業への挑戦
  • 水まわりで培ってきた技術を活かし、新領域へ
  • 1978(昭和53)年に茅ヶ崎工場(神奈川県)内に延べ面積1250㎡の研究棟が建設され、ファインセラミックスを含む無機素材やその他有機素材など、新分野の研究が進められた。1982(昭和57)年には、「TOTO精密セラミックス」として精密定盤や測定工具などの構造物の試験販売が開始され、高い技術評価を受けることができた。大型の鋳込み成型技術や焼成技術、研磨加工技術は、いずれもTOTOが衛生陶器や水栓金具で独自に培ってきた技術であったからだ。大物成型部材の高度な技術は、現在も継承され、さらに発展している。
  • 大型ガイド軸(大型の液晶パネルや半導体などの製造装置に使われる部材) エアスライド(半導体・液晶露光装置などで位置決めをサポートする高精度なものさし部材)
  • TOTOのファインセラミックスへの取り組みは1970年代から新分野の研究が進められたことに始まる。水まわりで培った技術が新領域にも活かされている
  • 第2章 ファインセラミックスとTOTO水まわり製品
  • ファインセラミックスの技術で、自社製品でも実績を挙げていった
  • こうした新分野への展開と並行する形で着実に実績を挙げていったのが、1981(昭和56)年に量産を開始した水栓向けセラミックバルブなど、TOTOの水まわり製品向けの部品である。シングルレバー混合栓に用いられたアルミナ製セラミックディスク(セラミックバルブを構成している部品)は、金属材料が抱えていた腐食や摩耗の問題を解決するとともに、高い摺(しゅう)動性(滑りやすさ)によって滑らかな動きを実現するものとして実用化された。その後も自社製品向けの開発は続き、1983(昭和58)年にTOTOホームサウナ用のセラミックヒーター、1987(昭和62)年にはウォシュレット向け円筒ヒーターを供給した。
  • ウォシュレット向け円筒ヒーター シングルレバー混合栓向けアルミナ製セラミックディスク
  • 金属材料が抱えていた腐食や摩耗の問題を解決するとともに、高い摺(しゅう)動性(滑りやすさ)によって滑らかな動きを実現するものとして自社製品に実用化された
  • 第3章 ファインセラミックスでつかんだ手応え
  • 静電チャック※ 実用化への挑戦
  • TOTOは、高剛性や高精度を生かした測定工具やエアスライドをはじめ、静電チャックのような半導体製造装置の部品、光フェルールやレセプタクルのような光通信部材、また電子記憶媒体のデータの読み書きに使われる磁気ヘッドなど次々と手掛けていった。現在TOTOのファインセラミックスの主力商品となっている静電チャックは、1982(昭和57)年に開発が開始された。電子ビーム露光装置用静電チャックの開発に続いて、ECR(Election Cyclotron Resonance)エッチング装備用として実用化に取り組むが、割れや歩留まりの悪さを解消できず、一度は頓挫したかに見えた。しかし他社との共同開発により、初めてエッチング装置用静電チャックについても実用化に成功する。TOTOが当初から先導的に取り組み、実用化への道を切り開いた、まさにTOTOのファインセラミックスを代表する商品といえる。現在では国内外の主要な半導体製造装置メーカーと緊密な連携の下、常に次世代に向けた研究開発を継続している。
  • ※ 静電チャック(携帯電話やパソコン、自動車などに内蔵される半導体を製造する装置内の部材)
  • いち早く取り組んだ「静電チャック」は、TOTOのファインセラミックスを代表する商品といえる
  • 第4章 1990年代の「選択と集中」
  • TOTOならではの領域に特化
  • 1990年代の日本は経済活動全般が停滞し、各企業で「選択と集中」が進められていった。TOTOのファインセラミックスは①エアスライドや静電チャックへのさらなる注力、②高精度商品で差別化が可能な光フェルールの生産強化、③TOTOが伝統的に強みを持つ鋳込み大型商品、一体型アルミナ発光管などの強化、の3点が進められることとなり、「TOTOの存在価値を発揮できる領域を見定め、特化すること」を決めた。領域を絞るのとあわせて、大型投資も実行された。1992(平成4)年には、大分県中津市に中津第二工場を建設し、セラミック商品の生産拠点統合を目指すと同時に、1994(平成6)年には、福島県楢葉町に光フェルールの生産工場としてTOTOオプトロニクスを設立し、生産体制の強化と集約を図った。
  • 中津第二工場(1992年) 中津第二工場 定礎の辞
  • 11代目社長 古賀の「さらなる需要の増大にそなえ事業のいっそうの発展を期して、ここ中津市田尻崎の地に世界最尖端を志向するニューセラミックスの生産拠点を建設する」という言葉は、今も受け継がれている
  • 第5章 ITバブルとリーマン・ショック
  • 経済の荒波を乗り越えて
  • パーソナルコンピューターの普及が進んだ1990年代末になると、インターネットの利用が急速に拡大し、いわゆる「ITバブル」が引き起こされた。TOTOでも、1999(平成11)年から2000(平成12)年にかけて、通信インフラに欠かせない光フェルールとレセプタクルの売り上げが急増した。TOTOは旺盛な需要に応えて一部の工場に大規模な設備投資を実行することを決定、ところが急激な反動減が襲ってきた。新工場は残念ながら操業を目前にして取り止め、縮小という苦渋の決断を下さざるを得なかった。大規模投資の活用をあきらめるといった犠牲を払いつつも、立て直しに向けて静電チャック事業の拡大などに取り組んだ。製品の中には、生産しているのは世界中で数社のみというものもあり、セラミック分野での存在感が増していった。
  • 光フェルール(光ファイバーを接続する部品) 操業取り止めとなった富岡工場
  • 第6章 東日本大震災による危機
  • 続く試練と闘って得たもの
  • 2011(平成23)年3月11日、未曽有の災害、東日本大震災が発生した。光フェルール・レセプタクル・ボンディングキャピラリーを生産している福島県楢葉町の工場と富岡町の工場が立ち入り禁止区域に入ってしまう。TOTOの製品は高い品質が評価され、シェアの大きいものもあっただけに、生産ラインの喪失は世界中のお客様に影響を与えることとなった。立ち入り禁止となった工場の従業員も被災者だったが、ライン復旧に力を注いだのである。他社にOEM生産を依頼したり、他のTOTOグループ会社の拠点に生産ラインを立ち上げたり、関係者が一丸となって推進することで驚異的な早さで復旧することができたのである。ファインセラミックス事業は、何度も想定外の試練に見舞われたが、思い切った決断、グループ会社との連携、決してくじけない意志などで乗り越えてきた。
  • レセプタクル(光半導体と光ファイバーを高精度に位置あわせするキーパーツ) ボンディングキャピラリー(ICチップとリードフレームを金線でつなぐためのツール)
  • 立ち入り禁止区域に入った工場の社員は、自ら被災者であるにもかかわらず、ライン復旧に力を注いだ
  • 第7章 常識を覆す焼かないセラミックス誕生
  • 大きな可能性をもつAD法
  • ITや通信に関わる先端技術は、そもそもワールドワイドである。ファインセラミックス事業の海外売上比率も、2010(平成22)年度の48%から2015(平成27)年度には76%にまで高まっている。2013(平成25)年以降、TOTOのファインセラミックスが海外売上比率を急速に伸ばした要因には、新たな商品の開発があった。それが、今までの常識を覆し、焼成工程無しでセラミック膜を形成する「エアロゾルデポジション(AD)法」である。このAD法は、第6回ものづくり日本大賞(内閣総理大臣賞)をはじめ数々の受賞実績を挙げるなど、国内外から高い評価を受けている。AD法による膜の生成は、すでに他のさまざまなセラミック素材でも可能なことが実証されており、将来に向け、極めて大きな可能性を持った技術であることは間違いない。
  • AD法によるセラミック製膜
  • AD法は、TOTOのファインセラミックス事業のさらなる成長へのカギとなる可能性を秘めている
  • 第8章 ファインセラミックスが支えるもの
  • 独自技術で未来社会創造に貢献
  • 研究開始からおよそ40年、TOTOのファインセラミックスは、衛生陶器や食器などで鍛え上げられた技術を基盤として、独自の事業を築き、現在世界中に製品を提供している。20世紀後半から急速に発展した携帯電話をはじめとする移動通信ネットワークは、高速化、大容量化の進展により、今世紀に入ってさらなる発展を見せている。そしてその基盤を支えるファインセラミックスの可能性もさらに大きく膨らもうとしている。次世代に向けた半導体や液晶の量産が必要となる中、TOTOのファインセラミックスは、独自技術でそれを下支えし、未来社会創造に貢献することを目指している。
  • 時代の最先端を支えるファインセラミックス製品
  • 生活のスマート化や、IoTなどのますますの進展を、しっかりと下支えすることで、未来社会の創造に貢献することを目指す