TOTO
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  • 5. ウォシュレット®- 革新は日常へ、そして世界へ  ─  水と電気との格闘の軌跡
  • プロローグ 日本のトイレが迎えていた転換点
  • TOTOが新規分野への挑戦を進めていた1978(昭和53)年、輸入販売をしていたウォッシュエアシートをベースにした、新たな温水洗浄便座の開発が決定した。いうまでもなく、これが初代ウォシュレット®誕生の第一歩である。ウォシュレット®の原型となったのは、アメリカン・ビデ社が医療用に製造していた「ウォッシュエアシート」である。肛門科の病院を中心にした販売だったが、お客様から「湯温が不安定、吐水角度も一定しない。何とかしてほしい」という声が寄せられていた。1967(昭和42)年に日本の輸入商社が特許と独占販売権を取得したことから、製造が国産メーカーに委託され、一部の改良や暖房便座機能の追加などが行われた。そして1970年代後半になると、口コミによって一般家庭に温水洗浄の心地よさが広まり、販売が急伸していった。
  • ウォッシュエアシート(国産品) ウォッシュエアシート(輸入品)
  • 快適さ・心地よさが口コミで広まり販売が急伸
  • プロローグ 日本のトイレが迎えていた転換点
  • トイレは用を足す「場所」から「空間」へ
  • またこの時代、日本のトイレは大きな転換点を迎えていた。日本において、トイレが和式から洋式へ大きく変わったのは、大阪万博が開催された1970(昭和45)年だといわれる。そして、1977(昭和52)年には、ついに和式便器と腰掛便器の出荷数が逆転する。その変化は便器のみにとどまらなかった。西洋人にとって便座が冷たいことは当たり前であったが、日本人の多くはこれを受け入れられずに便座カバーをかぶせ、さらには暖房便座という新たな需要を生み出したのである。こうしてトイレは用を足す「場所」から「空間」へと変わっていき、日本はトイレの新時代に突入するのである。
  • 和式トイレから洋式トイレへ変わり日本はトイレの新時代へ
  • 「清潔で快適なトイレ」への挑戦
  • このような背景の中、「清潔で快適なトイレ」を求めるニーズは確実にあると感じていたTOTOは、新しい市場開拓を目指し、新型ウォッシュエアシートの自社開発を決断した。TOTOでは通常、新商品の開発期間には3年が充てられていた。ところが、この前例のない商品の開発には、なんと1年半の時間しか与えられなかった。この過酷な試練を開発チームは乗り越え、ウォシュレット®は成功への道を踏み出すこととなる。それを可能にしたのは、20代を中心としたメンバーたちの気力と体力、そしてチームワークによるところが大きい。
  • 「おしりを洗う」という新しい生活習慣への挑戦がここからはじまる
  • 5 ウォシュレット®革新は日常へ、そして世界へ ─水と電気との格闘の軌跡
  • 「おしりを洗う」という新たな生活文化を提案し、日本に根付かせたウォシュレット®。水と電気の融合という課題に挑戦し、たゆむことのない進化を続けながら、それまでの常識を超えた「ワンダーウェーブ洗浄」の登場で、次なるステージへと踏み出した。そして今、世界という広い舞台で、ウォシュレット®の新たな挑戦が始まる。
  • 第1章 社運を賭けたプロジェクト
  • 未知なるデータへの挑戦
  • どのような商品を目指すのか、手がかりはウォッシュエアシートに寄せられた声だった。「湯の吐水量が少ない。長く洗っていると水が出てくる。肛門にうまく湯が当たらない。」このような意見に対して開発メンバーは自分自身が実験台となって問題点を1つひとつ確認していくことで、あるべき商品の仕様を固めていった。具体的には、正確な場所に湯を当てるために、便座の中央に針金を張ってそれぞれの肛門の位置に紙を貼って数値化した。洗浄水の温度については、0.1℃ずつ温度を上げては自分の体に当て、適切な水温を導き出した。だが、もっと多くのモニター人数が必要だった。当てる角度は何度が適切か、水量と洗浄時間はどれくらい必要か、湯が噴き出すノズルの位置はどこがいいか、といった事象ごとに科学的なデータが必要であった。
  • イメージ
  • 自分自身が実験台となって問題点を確認していった
  • 第2章 ウォシュレット®の基礎データ
  • 真摯な取り組みと徹底的な検証
  • こうしたデータを得るために開発チームは社内に働きかけ、協力者を募った。だが、いかに自社の新商品開発のための貴重なデータとはいえ、デリケートな部位であるおしりへの実験はさすがに抵抗感が大きく、特に女性社員の協力を得ることは容易ではなかった。しかし、最終的には開発チームの熱意に応えた参加者から、延べ300人以上の有用なデータを採ることができた。その結果、洗浄する温水は38℃、便座の温度は36℃、乾燥のための温風は50℃、ノズルから噴出する洗浄水の吐水角度は43度といった、新たな温水洗浄便座開発には欠かすことのできない貴重なデータが得られたのである。
  • ノズルから噴出する洗浄水の角度イメージ
  • 開発チームの熱意により社員約300人がデータ収集に協力し、基礎となるデータができる
  • 第3章 タブーへの挑戦
  • 水と電気の融合
  • 新しい温水洗浄便座には、温水洗浄と温風による乾燥、そして暖房便座の3つが基本機能として求められていた。いずれにも、素早くかつ正確に温度をコントロールする電子技術が必要であった。しかも、これを水まわり商品に組み込まなければならないという、高いハードルも存在した。もっとも難関だったのは、適温を維持するために温度の変化を素早く正確に感知し、必要な制御を即座に行う技術だった。この難しい問題に対して担当者が導き出した答えは、ICによる制御であった。しかし、ICのような精密部品を水がかかる可能性がある商品に使用することは、当時はまだ考えられない時代であった。
  • コントローラー(温水温度制御用IC)
  • 水がかかる可能性がある商品への使用は、漏電の可能性もあるため、難しいと考えられていた
  • 第4章 ハイブリッドIC搭載
  • ウォシュレット®の誕生
  • この問題を解決したのが、特殊な樹脂でICをコーティングした「ハイブリッドIC」だった。開発メンバーは、風雨にさらされながら点滅する交通信号機をヒントにハイブリッドICを樹脂製のカバーで覆うことで、この問題をクリアすることができた。さらにサーミスタ(thermistor:温度の変化により、抵抗値が変化する電子部品)を用いることで、よりきめ細かな温度制御を実現した。こうしていくつものハードルをクリアして誕生した記念すべき新商品が「ウォシュレット®G」である。最先端の知識と技術を駆使して完成させたのであった。
  • ウォシュレット®G
  • 常識にとらわれない柔軟な発想と新商品に懸ける熱い想いによりついにウォシュレット®が誕生する
  • 第5章 危機を乗り越え
  • 「拭く」から「洗う」へ
  • 1980年6月、ウォシュレット®の販売が始まった。販売は好調で、販売直後から品不足になるほどだった。こうして好調なスタートを切ったウォシュレット®であったが、発売から3カ月が経ったころ、突然「温水が水に変わる」というクレームが多数寄せられるようになる。この危機に際して9代目社長山田は、修理対応ではなく、商品ごと取り替えるという対応を決断する。この思い切った判断が市場の信用を引き出し、その後の成功へとつながっていくのである。発売から2年後の1982(昭和57)年には、今も多くの人の記憶に残るコピー「おしりだって、洗ってほしい。」とともに全国に放映されたテレビCMが大きな話題となる。「拭く」から「洗う」という新しいトイレ文化とともに、ウォシュレット®の販売は拡大していった。
  • ウォシュレット®GⅢの量産体制が整備された小倉第二工場
  • 危機を乗り越え、「おしりを洗う」という新しい生活習慣を提案
  • 第6章 進化に次ぐ進化
  • ウォシュレット®の躍進
  • 当初は月2500台を想定していた出荷台数は、累計台数で見ると、7年後の1987(昭和62)年に100万台を突破。そして1998(平成10)には1000万台突破を実現する。販売が順調に進む一方、機能についても、洗浄、乾燥、暖房便座という3つの基本性を基盤としながら、清潔性を高めたセルフクリーニング機構、快適性を追求したムーブ洗浄やマッサージ洗浄、オゾン脱臭の開発、女性活躍時代に向けて清掃性を追求した本体や便座、便ふたの着脱化など、ウォシュレット®は進化に次ぐ進化を重ねていった。
  • ウォシュレット®の累計出荷台数推移と追加機能変遷
  • 途切れることなく技術革新を重ね市場に受け入れられていく
  • 第7章 洗浄技術の大きな展開
  • 機能とデザインの融合
  • しかし、それまでのウォッシュレット®の基本デザインは、機械としての性能の良さや堅牢性が前面に出たもので、信頼感は十分だったが、デザイン性が高いとはいえなかった。また、それまでの開発は、まず機能ありきで、必要な部品を検討した後にデザインに入っていた。そこで新たなウォシュレット®の開発に当たっては、デザイナーが自由にデザインを考え、そこに必要な機能を入れ込んでいく手法をとることにした。出来上がったデザインは、「シンプル&コンパクト」。この形状を実現するには、貯湯タンクは使えない。となれば、湯をつくる機構は瞬間式以外にない。だが、瞬間式では貯湯式に比べてつくれるお湯が減ってしまう。少ない水量で、これまで以上の洗浄力と快適な洗い心地を実現するための技術開発、これが開発のカギとなった。
  • 開発実験の様子
  • 「シンプル&コンパクト」を実現するために、「洗浄力が高く、かつ湯切れしない洗浄」を研究
  • 第8章 洗浄へのこだわり
  • 常識を超えた「洗い」
  • そして出たアイディアが、「水を玉状にして連続吐水する」だった。これなら、少ない水量でもしっかりした洗浄感が得られるのではないか。なぜなら、水は連続的に当てるよりも、断続的に当てる方が応力が大きくなるからだ。開発チームは実証実験を繰り返し行った。それによって得られた結果は、強い吐水と弱い吐水を、交互に1秒間に70回以上繰り返し連射することで、従来以上の洗浄感が得られるというものであった。「ワンダーウェーブ洗浄」と名付けられたこの洗浄方式は、ウォシュレット®の洗浄技術を革命的に変えるものとなった。
  • ワンダーウェーブ・おしり洗浄(イメージ) 初代アプリコット
  • 「水玉」という概念でウォシュレット®の洗浄技術を革命的に変えたワンダーウェーブ洗浄
  • 第9章 グローバル供給
  • ウォシュレット®の世界戦略
  • 2016(平成28)年現在TOTOは、日本を含め、中国、アジア、米州、欧州など18の国と地域で事業を展開している。ウォシュレット®は、グローバル・プラットフォーム設計(部品統合、機能部の共通設計)を軸に、現在、日本2工場とマレーシア、上海の全4工場で生産し、世界各地へ供給している。
  • 日本2工場とマレーシア、上海の全4工場で生産・供給
  • 地球のどこでも「おしりを洗う」ことが出来るように
  • 第10章 世界へ広がるウォシュレット®
  • 快適なトイレ空間を世界へ
  • ウォシュレット®は、おしりを洗うという機能を世に送り出した商品である。一方でTOTOは、セフィオンテクトやキレイ除菌水などの清潔機能、あるいは高度な節水技術によって便器の機能を高めてきた。ウォシュレット®と便器を一体化し、デザイン性を高めた商品がネオレストである。日本よりはるかにデザインが重視される海外において、ネオレストはその機能と優美なデザインにより、最高級ホテルやレジデンスに採用されている。つまり、日本市場の厳しい目で育まれたクリーン技術と、これまで海外市場でつかんできたデザイン力を統合したネオレストが新たな牽引役となり、さらにウォシュレット®のマーケットは拡大しようとしているのである。ウォシュレット®の存在感は、海外市場において確実に高まろうとしている。
  • NEOREST NX(「ISH2017*」参考出品)